主宰挨拶
負け試合を挑んでいると分かっている。アイデンティティを育めと言われ続けた波に自然と圧されて、自分にしかできないことを探し続けてみたら、時代はまたその色を塗り替えるようにレール社会に乗り換えてきた。気づけばはじかれ、気づけば踏み外していたようだった。レールを設けられるのを拒んで自分でひいてみれば、しっかりと列車を走らせている人たちのすごさを知るばかりだった。社会に属さないでは生きられない。でも社会に属すことはままならない。
身の程を弁えるべきだと思う。才があればとびきり前衛はじけたレールをひけたろうが、そうじゃない。レールをひくってことは、大地を踏まないってことに等しい。人の住んでいるところだけを世界とは言わないように、踏みしめられなかった無数の大地にこそ、まだやるべきことがあるように思えて仕方が無いんだ。
俺たちは負けだ。俺たちに社会はつくれねえ。でもそれは放棄したのとは違うんだ。俺たちはレールの下の大地でいい、大地の果ての、海でいい。海の上の空でいたい。もしレールを踏み外しておっこっちまった人がいたら、彼らとともに歩きたい。もしレールの下の大地に思いを残してきた人がいるなら、代わりに語り継いでいきたい。
列車に乗って走るってのをコケにしているわけじゃない。列車に乗って走り続けるには、その途中で時には人を撥ね殺してしまうこともあるだろう。でも涙を拭って、自分を押し殺して走らなければならない列車もある。その慟哭は俺たちが引き受けるから、どうか走り続けて欲しい。どうかやり遂げて欲しい。あんたらの希望は俺たちの憧れで、あんたらの絶望は俺たちが伝説に変えるから、それが踏み外した者たちの役割だから、どうか走り続けて欲しい。
あんたたちが捨てざるを得なかったものを糧に、海賊ハイジャックは前に進まなければならない。
主宰 演出・脚本家 宇野 正玖



